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2007年1月

6.あたらしい時代の地域防災と婦人会・女性会の活動&災害時のLPガスの供給を考える

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浅野幸子(全国地域婦人団体連絡協議会・研究員)

■防災学習パンフレットをなぜつくったのか?

 婦人(女性)防火クラブとは活動の重なりも多い婦人会ですが、このたび全地婦連では防災学習パ ンフレットを作成しました。これは、LPガス(プロパンガス)の事業者団体と消費者団体で構成す る、LPガス安全委員会の協力も得て作ったものです。
 これは後述のように、地域防災活動をめぐる状況が近年変化してきており、特に国の防災政策にお いても地域防災力や、女性・消費者の視点、また地域内だけでなくNPOや企業などとの多様な連携 による、より一層効果的な「減災」への取り組みが期待されはじめていることを受けています。
 そこで、これまでの地域の地道な取り組みを地域内外できちんと評価し合いながら、それを生かし た形であたらしい要素を地域防災活動に取り入れていくためのガイドとなるよう、コンパクトに内容 をまとめました。具体的な話し合いができるように、「防災まちづくりチェックシート」もつけてい ます。
 さらに、災害時のエネルギー供給は、体の弱い人の食事・赤ちゃんのミルクづくり、身体の衛生維 持など、命と健康の問題に直結します。阪神・淡路大震災や新潟県中越地震において、ガスの供給が 数日から数十日途絶え、入浴だけでなく煮炊きにも苦労があったことから、LPガス(プロパンガ ス)の災害時の有効性と、地域の大小の避難所へのスムーズな供給についても、地域で具体的に学び 話し合える内容としました。
 全体を通して大切にしたのは、日常においても安全・安心で住み続けられるまちづくりにもつなが る防災活動という考え方と、福祉・人権の視点、そして多様なネットワークです。

※パンフレットはこちらです。PDFで一部を掲載。(A4版・全12ページ)
(パンフレットのお問い合わせは全地婦連まで)

■「地域女性」の防災活動が、今、時代の先端を走っている訳とは?

 婦人(女性)防火クラブや婦人会をはじめとする地域に根ざした女性組織は、家庭と地域を自らの 手で守ろうと、現在のように防災政策や対策が充実してくる遥か以前から、家庭防火・地域防災に非 常に熱心に心を砕いてきました。
 そして、その防火・防災活動では自治会・町内会との連携なども常に意識され、またクラブ員の女 性たちはそれぞれに地域で、一人暮らしの高齢者などを対象とした食事会、火災予防や振り込め詐 欺・オレオレ詐欺に注意といった消費者問題啓発の呼びかけ・各戸訪問、ゴミの分別やリサイクル活 動、公民館や学校などとの連携による世代間交流イベントなど、よりよい地域づくりに汗をながして いる方も多いのではないでしょうか?
 ところで近年、社会全体の防災への関心が高まると同時に、政策面での地域防災力への期待もより 一層高まっています。
 たとえば2004年の新潟県・福井県における豪雨災害を契機に、高齢者や障害者などの災害時要援 護者への支援が国の政策としても明確にされたことから、民生委員や地域福祉活動、自治会活動など に、災害時要援護者の把握と具体的な支援への取り組みが期待されています。
 また、学校教育への期待はもちろん、文部科学省が昨年2月に作成した社会教育のパンフレットで も、国民に必須な学習テーマの一つとして「防災教育・啓発活動」が揚げられています。
 そして、今世紀は大規模な地震災害の発生も複数予測される中、2005年12月、国の防災 政策を決 めていく中央防災会議のもとに「災害被害を軽減する国民運動の推進に関する専門調査会」が設置さ れ、自治会やPTA・消費者団体などの地域の諸団体、公民館、企業、マスメディア、専門家、関係 省庁が集まり、いざ大規模災害が起きても被害を最小限に抑えることのできる「減災社会」の実現に むけて、社会全体の取り組みへと進めるための方策が約一年にわたって議論されました。
 そこで重視されていることは、日常のさまざまな活動に防災の要素を効果的に取り入れることで取 り組みを継続し、同時に若い世代にも広げていけるようにすることや、地域団体と行政・消防機関は もちろんのこと、さらに学校、公民館、企業、福祉団体・NPOなど、多様な主体の間での連携づく りです。
 地域団 体に関しては例えば、企業が災害時に住民の避難場所や資機材の提供などの一定の支援を行 うことを取り決めた「協定」の周辺自治会との締結、公民館・学校やPTAとも連携した、多世代交 流型の学習会や防災フェスティバルの開催などの例が挙げられています。
 このように、防災政策のあらたなトレンドを考えると、地域内外でさま ざまな分野の活動を行い、 どのようなキーパーソンや組織がいるのかを知っている、婦人(女性)防火クラブをはじめとする地 域防災を担ってきた女性たちが、今こそ非常に重要な存在になってきていることが理解できます。つ まり、時には古くて当たり前に見られがちな活動こそが、今もっともあたらしいと言えるでしょう。

参考) 『平成18年版 防災白書』(内閣府編)の国民運動に関する記述

■地域に根ざした女性の活動としての視点と実績を大切に

 地域に根ざした女性の活動のもっとも大きな価値とは、いったいなんでしょう。それは、「生活世 界・空間に関する想像力の豊かさ」ではないでしょうか?また、女性だからこそ配慮すべきニーズも 大規模災害時には起こり得ますが(着替えやトイレ、妊産婦・乳幼児への対応など)、そうした個々 人の状況に応じた配慮という考え方は、高齢者・障害者・子ども・外国人などを含む、住民みんなの 福祉・人権を大切にするという考え方にもつなげていくことができ、結果として地域全体の協力関係 も深めることができるでしょう。
 過去の大規模災害をみていくと 、災害直後はもちろん復興においても求められるのは「総合力」で す。くらし・生活とは、いくつもの要素から成り立っています。家庭には子どもいれば高齢者もお り、衣・食・住が必要であり、医療・福祉などのサービス、教育、文化活動、自然とのふれあいな ど、さまざまなことが絡み合って日常を豊かにしてくれています。どれひとつとして単独で取り出す ことはできないでしょう。
 ですから大規模災害時に は複雑にいくつもの要素が絡んだ問題が起こるのです。たとえば普段頼り になる家族がケガをして動けなくなる可能性もありますし、いつもの福祉・医療・保育などのサービ スを一時的に受けられなくなったり、各種の手続きや避難生活に必要なものの調達など、家庭の所用 も増大してしまいます。働く女性も増えている今日、特に家庭でいざというときのことを話し合って おくことはとても重要でしょう。
 このように、災害から生活を守 る準備をし、また災害にあって日常生活が一時的に困難に直面して も、なお、それを乗り越えていくためには、くらしや地域に対する関心と互いの信頼感をみんなで高 めておくことが必要なのです。そうすることで、より効果的な事前対策や、いざ災害が起こった場合 の、柔軟な判断や対応、助け合いを可能とするでしょう。 
 家庭での話し合いや、地域の内外でも関係が縦割りになら ないようさまざまな人・組織の間の交流 を、風通しよくしながら深めておくことが大切です。それはつまり、日常の家庭生活・地域活動も、 より活性化することにつながるでしょう。
 このパンフレットを活用しながら、地域 に根ざした女性団体だからこそできる防災活動を、さらに 楽しく素敵につむいでいただければと思います。

参考)『婦人防火クラブリーダーマニュアル』の災害時要援護者に関連したページ
参考)『婦人防火クラブリーダーマニュアル』の災害時要援護者に関連したページ
※日常活動編 (第5章「災害弱者(要援護者)に配慮した地域づくりをめざして」)
※訓練・実践編(第7章「災害時用援護者のケア訓練~地域全体の安全性向上を目指し て」)


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