向こう三軒両隣
⽑利 美恵⼦

「ただいまより宇和島市地震、津波初動訓練を開始します」これは平成15年10⽉に『南海地震今から備えよう︕全市⺠で』を合⾔葉に当市で実施された⼤規模な訓練です。
私が婦⼈防⽕クラブの活動に参加するようになったのは、昭和43年の宇和島湾地震での体験からです。
当時私は⼦供が⽣まれたばかり。深夜突然地⾯の底から突き上げてくるものすごい衝撃に、ただなすすべもなく、⼦供をかばって布団をかぶりじっとしているだけでした。このときほど時間が⻑く感じられたことはありません。主⼈の「⼤丈夫か」の声に我に返りましたが、周りが真っ暗闇で何も⾒えません探し出した懐中電灯の明かりで周りの様⼦が少しずつ分かってきました。
寝室も隣の部屋も台所も家財が倒れて⼤混雑、家は新築間もない平屋建てでしたので、壁がひび割れたくらいです済みました。
その後、何度も襲ってくる余震に震えながら⼦供をしっかりと抱いておりました。
そのうちに停電も直り明るくなった部屋を⾒て、家財道具の散乱状態に呆然としておりました。
そんな中、近所の⼈たちが「⼤丈夫ですか」と声をかけてくださったのです。向こう三軒両隣とはよく⾔ったものです。この⾔葉のおかげで余震の恐怖が和らいだことを覚えております。このときから近所付き合いの⼤切さを考えさせられました。
以後、各会合で地域における連携強化やコミュニティの実現を呼びかけております。今年も⼗⽉に⼤規模訓練が実施されます。
近い将来に南海地震(マグニチュード8クラスの巨⼤地震)が確実に発⽣すると⾔われています。住⺠の⾼齢化やコミュニティの意識の希薄化等により災害は増⼤し、当地区で死傷者は最⼤2,500⼈を超えると予測されています。
『⾃分たちの地域は⾃分たちで守る』この想いをクラブ員は常に意識して持って、防災⼒の向上と啓発活動にがんばっています。
(消防庁機関紙「消防防災/2004-7・夏季号」より転載)