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2004年8月

1.福井豪雨における全国婦人防火クラブ連合会の対応及び活動状況について

目次 次頁
平成16年7⽉福井豪⾬における全国婦⼈防⽕クラブ連合会の対応及び活動状況について

1.発災直後の状況と緊急消防援助隊の出動

7⽉18⽇未明から集中豪⾬に⾒舞われた福井県においては、福井市、美⼭町の⾜⽻川の堤防が決壊、家屋浸⽔は元よりJR⼀乗⾕―美⼭間の6箇所の鉄橋が流される等公共交通機関も遮断、また鯖江市等県内各地にも⼤きな被害をもたらしました。

同⽇中に福井市内の2万世帯余に避難指⽰が出され、同市内の1万3千世帯、美⼭町のほぼ全域に及ぶ1千1百世帯ほか鯖江市等7か町村において避難勧告が出されました。

孤⽴集落や泥流に⾒舞われた家屋に取り残された住⺠も多く、直ちに福井県及び県下2市6町村で災害対策本部が設置されるとともに⾃衛隊派遣の要請に加え緊急消防援助隊(富⼭、⽯川、⻑野、愛知、滋賀、京都、⼤阪、兵庫、奈良、⿃取、島根各府県及び川崎、京都、⼤阪、神⼾の各指定市計2府9県4都市より航空隊9隊を含む計156隊668名)が駆けつけ、⼈命救助等に当たりました。因みに、新潟県豪⾬災害に対しては、1都11県1市より延べ166隊678名の緊急消防援助隊が派遣されました。

被災直後の被害状況等をみると別紙のとおりであり、災害救助法の適⽤は元より激甚災害の指定を受けることともなりました。


2.婦⼈防⽕クラブの対応
①発災直後

福井県婦⼈防⽕クラブ連絡協議会(⼩川英⼦会⻑、約1万5千名)は、県・市町村幹部間で連絡を取り合い、ほとんどの避難所に駆けつけ、炊き出し等諸活動を発災当⽇から開始、以後、各地で2週余に及ぶ連続した緊急時対応、復興⽀援に従事しました。

また、中部・北陸ブロックの婦防研修会を通じ親交のある各県婦防連幹部間において⼈的・⾦銭的緊急⽀援等について電話連絡を取り合うとともにそれぞれの幹部は、時々刻々㈶⽇本防⽕協会に必要 な状況報告を⾏っておりました。

なお、新潟県については、県レベルの婦防連絡協議会が未結成ということもあり、発災時における婦防の活動状況の把握が困難であったこと、同様に三条市、五泉市等被災地において婦防が未結成であったこと等により、同県防⽕委員会と㈶⽇本防⽕協会との情報交換の中で、防⽕協会を介した今般の災害対応は福井県を中⼼とさせていただく旨調整されました。


②広域⽀援体制

このような状況の中で、福井県婦防連及びブロック圏内の数県の婦防連より、被災地における電気、ガス、⽔道をはじめライフラインが停⽌しており、多数の住⺠に対する⻑期の給⾷が必要でありますが、被災した婦防クラブ員も多く、かつ、炎天下での汚泥・岩⽯等除去作業により疲労が激しいこと等から⼈的な広域応援が必要であり、他⽅、婦防連の活動費・被災地⽀援費等は、県連幹部による私財投⼊に依るところが⼤きく、その⾯での協⼒・⽀援も合わせて要請がありました。

これらを受けた㈶⽇本防⽕協会においては、同県防⽕委員会に対し、臨時の運営費⽀援を⾏うとともに担当者を福井県に派遣し、同県災害対策本部及び県連会⻑との協議を経て、炊き出し⽀援の緊急性が⾼い地域を選定して広域応援を呼びかけることとし、直ちに、洪⽔と⼟⽯流が重なったことでほぼ全⼾が被災し、要員の⼿薄な美⼭町(蔵作地区)について、各県婦防連に対し⼈的⽀援の要請を⾏いました。

同時に、福井豪⾬災害を中⼼とした婦防連⽀援⾦・義援⾦を募ることとし、各道府県防⽕委員会・婦防連会⻑にこの旨連絡し、協⼒を仰ぐこととしました。

3.婦防連⽀援活動状況

  • ⼈的⽀援については、⻑期に亘る場合には、婦防クラブ員の多くが就業し、かつ、主婦層が多数を占めること等を考慮すれば、短期派遣を前提とすることが必要であると判断し、関東から近畿圏に広く呼びかけることとし、当⾯は、同ブロック内の⽯川、愛知、静岡、⼭梨による派遣についてそれぞれの県連会⻑及び県防⽕委員会と合意しました。(なお、要請と同時に滋賀県、⼤阪府、兵庫県各婦防連からも強い派遣申し出があったほか京都府(府連未結成)福知⼭市婦防からも申し出がありました。)
  • このうち、静岡県は県担当者及び愛知県は県担当者のほか⼥性防⽕クラブ連絡協議会事務局を置く県消防協会担当者が、それぞれの県連会⻑と現地へ赴き、実情把握の上、⽀援部隊(2泊3⽇、1泊2⽇等)を派遣しました。
  • ⼭梨県は県連会⻑等が⽀援物資(梅、葡萄等)を持参の上、2泊3⽇の⽀援を⾏い、⽯川県は、近隣の加賀市より消防本部職員により引率されたクラブ員が2⽇間(異なるクラブ員による⽇帰り1⽇交代)現地へ赴きました。

なお、㈶⽇本防⽕協会は、他地域からの派遣者について、逐⼀、⽒名を確認し、㈶⽇本消防協会に置く「婦⼈災害共済」に、防⽕協会負担による加⼊を図り、負傷時等不測の事態に備え、保険適⽤となるよう取り扱うこととしました。

このほか、美⼭町へは、⼩川会⻑をはじめ地元被災地外の三国町、福井地区清⽔町、丸岡町等の婦防クラブ員が⽇帰りで連⽇⽀援活動に従事しました。

  • これら⽀援部隊に㈶⽇本防⽕協会職員を加えた7⽉23⽇(⾦)から28⽇(⽊)の6⽇間の現地⽀援に望んだ総計は97名に及びました。なお、被災数⽇を経ても福井市内より通常⾞で30分程度の道のりが、数箇所で寸断、通⾏⽌めの⽀線も多く現場への時間を要し、地区公⺠館への⽀線は機材等運搬⾞優先のため徒歩区間も多く⾒られました。
  • 先ず、避難所ともなった蔵作地区公⺠館を婦防活動拠点と定め、住⺠代表の区⻑と協議の上、住⺠対象に昼夜⾷2⾷各200⾷を目途に炊き出しを⾏うこととし、地元の主婦も毎⽇交代で4〜5名は付いていただくこととしました。
    昼は「おにぎり」、夜は普通⾷とすることで地元と合意、しかし、主⾷の⽶は⽀援物資として搬⼊されていたが、副⾷となる⾷材はインスタント麺類のほかさしたるものは援助物資の中に⾒当たらず、まもなく地元住⺠より茄等野菜が届けられるようになりました。
    ただ、⽀援が動き出すと、とくにウィークデイにおける⽀援者の減少から被災家屋の復旧が遅れる地元住⺠の悲痛な声に押され、また、⾒るに⾒かねて、県内外の婦防クラブ員は、⽀援者のいない家屋の泥や岩⽯の除去、散乱した家屋・家具等の撤去、家屋内外の清掃などに従事、また、⽯川県婦防クラブ員は、引率の消防本部職員の指揮の下、2⽇間に亘り、終⽇、炎天下で2軒の家屋をほぼ原型を取り戻すまでに復旧作業を⾏いました。
  • 炊き出し部隊は、早朝7時からの作業開始となりましたが、各県婦防連会⻑が指揮するだけに、在り合わせの材料をたくみに調理、猛暑下の復旧作業に疲労困憊した住⺠に合うメニュー・味付けに腐⼼、住⺠やその⼦供たちからも毎⾷賞賛を得ておりました。
    勿論、炊出部隊も屋外での⻑時間の煮炊きも多く、全⾝汗みどろながら被災者のお礼の⼀⾔に、疲れも吹き⾶ぶと献⾝的な活動を⾏いました。
    また、その間に、全国から⼊るボランテイアからの「よろず相談所」となり、その負傷者が運び込まれると、⽇ごろの応急⼿当の腕を存分に発揮していました。
    26⽇前後にはライフラインが⼀応復旧しました。地元業者の気転から上⽔道本管接続・復旧が予想以上に早まったものの殺菌が為されていない状況ではありました。
    地元住⺠間から聞くことは、被災後1週、落ち着くに連れ、また、仮設住宅の申し込み等も開始されたことから残る者、村を出る者等の動きも取りざたされています。
  • そのために、住⺠間に微妙な不安が⾛り、⾃⽴への意欲が減退することも懸念される状況もあるとして、地元区⻑の住⺠⾃⽴が必要との積極的な賛同も得たことから、福井県⼩川会⻑と防⽕協会は、「ライフラインの復旧が広域⽀援の⼀応の区切り」とすることとし、28⽇をもって撤退する旨決定しました。(住⺠からは、もっと続けてほしいとの要望は続きました。)

(終わりに)
① 婦防による災害時の圏域を越えた⽀援のあり⽅については、平成15年度から当協会助成事業として開催されている地域幹部研修会(婦防連未結成都府県を含む。)いわゆるブロック会議を通じ、婦防連間の結束を図る中で、今般の経験を活かすことが期待されること。
② 阪神淡路⼤震災における⼤規模な婦防連による⽀援体制、⽀援箇所、炊き出し対象数等とは当然異なるが、「真夏の⽔害・⼟⽯流」への炊き出し⽀援を経験した婦防連の皆様にはご理解いただけるように、「⾷の安全性」の確保、伝染病発⽣情報の把握ないしは調理する者の健康診断(当地では、保健婦さんが実施)が肝要となること。

今般は、とりわけ「⽔」の安全性に気を使い、⽣⽔の摂取は厳禁でした。

また、被災直後の汚泥の悪臭は、まもなく猛暑の中で⼀気に乾燥が進み、少しの風で⼟埃が舞い上がり、マスクが⽋かせないことも多く、⽀援者を苦しめました。こうした経験の詳細についても参加した婦防クラブ員、福井県婦防連に、様々な機会を得て、全国の婦防の皆様に還元していただきたいこと。

③ ⽀援⾦・義援⾦については、緊急要請ながら僅かな期間に「114万円余」の善意を得た。こうした広域的な応援・⽀援体制の継続的な⼒が、東海・東南海地震等に備える婦防活動に新たな指針を与えるものと評価されること。


平成16年7⽉福井豪⾬による被害状況
主な被害状況(概数)

(平成16年7⽉22⽇8時00分現在 消防庁)

都道府県人的被害住宅被害非住家被害災対本部
死者<⼈>⾏⽅不明者<⼈>負傷者(重傷)<⼈>負傷者(軽傷)<⼈>全壊<棟>半壊<棟>⼀部破損<棟>床上浸⽔<棟>床下浸⽔<棟>公共建物<棟>その他<棟>都道府県市町村
福井県3231271159784,2258,105132919
合計3231271159784,2258,105132919

※1 表中の災対本部数には、すでに解散されたものも含む。
※2 床下浸⽔棟数には、未確認の床上浸⽔分を含む。

平成16年7⽉新潟・福島豪⾬による被害状況
主な被害状況(概数)

(平成16年7⽉22⽇8時00分現在 消防庁)

都道府県人的被害住宅被害非住家被害災対本部
死者<⼈>⾏⽅不明者<⼈>負傷者(重傷)<⼈>負傷者(軽傷)<⼈>全壊<棟>半壊<棟>⼀部破損<棟>床上浸⽔<棟>床下浸⽔<棟>公共建物<棟>その他<棟>都道府県市町村
福島県01100008900509
新潟県1501122152854,01222,41239838140
合計1512122152854,02022,50239843149

※1 表中の災対本部数には、すでに解散されたものも含む。
※2 床下浸⽔棟数には、未確認の床上浸⽔分を含む。

新潟県被害状況・救助活動状況

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