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2015年11月

2.火山災害に対する備え

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総務省消防庁 防災課

 日本には110の活火山があり、そのうち、気象庁により47火山が「火山防災のために監視・観測体制の充実等が必要な火山(常時観測火山)」とされています。
伊豆大島噴火の溶岩流(昭和61年11月19日)(気象庁ホームページより)
伊豆大島噴火の溶岩流(昭和61年11月19日)
(気象庁ホームページより)
 ここ最近の約30年間では、伊豆大島、雲仙岳、有珠山、三宅島、霧島山(新燃岳)で規模の大きな噴火が発生しています。昨年9月27日には御嶽山が噴火し、噴石等により死者58人、行方不明者5人、負傷者69人(平成27年9月15日現在)の甚大な被害が発生しました。今年5月29日には鹿児島県の口永良部島で噴火が発生し、島内住民全員が島外へ避難する事態となりました。また、6月下旬から7月上旬にかけて大涌谷周辺(箱根山)で、ごく小規模な噴火が発生するなど、各地で活発な火山活動が観測されています。
 火山は、風光明媚な景観を呈するとともに、周辺地域の生活を豊かにしている側面を持つ一方で、ひとたび噴火すると甚大な被害をもたらすことがあり、日本は有史以来数多くの火山噴火災害に見舞われています。火山と共生していくためには、火山を「正しく怖がる」、「正しく恐れる」という意識のもと、火山災害について理解を深めることが重要です。

主な火山災害の要因

○大きな噴石
 爆発的な噴火によって火口から吹き飛ばされる直径約50cm以上の大きな岩石等は、風の影響を受けずに火口から弾道を描いて飛散して短時間で落下し、建物の屋根を打ち破るほどの破壊力を持っています。被害は火口周辺の概ね2~4km以内に限られますが、過去、大きな噴石の飛散で登山者等が死傷したり建造物が破壊される災害が発生しています。

○小さな噴石・火山灰
 小さな噴石は、火口から10km以上遠方まで風に流されて降下する場合もありますが、噴出してから地面に降
下するまでに数分~十数分かかることから、火山の風下側で爆発的噴火に気付いたら屋内等に退避することで小さな噴石から身を守ることができます。火山灰は、時には数十kmから数百km以上運ばれて広域に降下・堆積し、農作物の被害、交通麻痺、家屋倒壊、航空機のエンジントラブルなど広く社会生活に深刻な影響を及ぼします。

雲仙岳の火砕流(平成6年6月24日)(気象庁ームページより)
雲仙岳の火砕流(平成6年6月24日)
(気象庁ームページより)
○火砕流
 高温の火山灰や岩塊、空気や水蒸気が一体となって急速に山体を流下する現象です。規模の大きな噴煙柱や溶岩ドームの崩壊などにより発生します。大規模な場合は地形の起伏にかかわらず広範囲に広がり、通過域を焼失、埋没させ、破壊力が大きく極めて恐ろしい火山現象です。流下速度は時速数十kmから百数十km、温度は数百℃にも達します。火砕流から身を守ることは不可能で、噴火警報等を活用した事前の避難が必要です。

○火山噴火に伴う堆積物による土石流や泥流
 火山噴火により噴出された岩石や火山灰が堆積しているところに大雨が降ると土石流や泥流が発生しやすくなります。火山灰が積もったところでは、数ミリ程度の雨でも発生することがあります。これらの土石流や泥流は、高速で斜面を流れ下り、下流に大きな被害をもたらします。噴火後に雨が予想されている時は、川の近くや谷の出口に近づかないようにしましょう。

 この他、溶岩流や火山ガス、火山活動に伴う地震も火山災害をもたらす要因です。
 過去には、寛政4年(1792年)に雲仙岳において、噴火により堆積した溶岩ドームが強い地震とともに大崩壊し、大量の岩屑なだれが有明海に流入して、大津波が発生し、約1万5,000人の死者が発生した事例もあります。

火山噴火に関する情報

○噴火警報
 噴火警報は、生命に危険を及ぼす火山現象の発生やその拡大が予想される場合に、「警戒が必要な範囲」(生命に危険を及ぼす範囲)を明示して発表されます。

○噴火警戒レベル
 噴火警戒レベルは、火山の状態を5段階のレベル(「避難」、「避難準備」、「入山規制」、「火口周辺規制」、「活火山であることに留意」)に分類したものであり、それぞれについて「警戒が必要な範囲」と「とるべき防災対応」を定めたものです。
 今年は5月29日に、口永良部島で噴火警報「レベル5(避難)」、8月15日に、桜島で噴火警報「レベル4(避難準備)」が発表されました(桜島については、9月1日にレベル3(入山規制)に引き下げ。)。

○噴火速報
 噴火速報は、登山者や周辺住民等に、火山が噴火したことを端的にいち早く伝えることにより、身を守る行動を取ってもらうための情報です。
 今年8月4日から運用が開始され、9月14日の阿蘇山の噴火の際は、運用開始後初めて噴火速報が発表されました。
「噴火速報の概要」(気象庁ホームページ参照)
http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/kaisetsu/funkasokuho/funkasokuho_toha.html

噴火警戒レベル(気象庁ホームページより)
噴火警戒レベル(気象庁ホームページより)

活動火山対策特別措置法について
 昨年の御嶽山の噴火を受け、火山対策の強化を図るため、今年7月に、活動火山対策特別措置法が改正されました(施行は6箇月以内)。この改正活火山法では、新たな火山対策の対象として、これまでの住民等だけでなく、登山者が明記され、また、

  • 火山防災協議会(都道府県や市町村などを構成員とする、警戒避難体制の整備等の協議を行う機関)の設置
  • 火山情報の伝達、避難場所等を含む避難計画等の都道府県及び市町村地域防災計画への記載
  • 市町村長による、警戒避難の確保に必要な事項の周知
  • 避難確保計画(ホテル等の集客施設等の管理者等により作成される、避難計画等)の作成
  • 登山者が自らの安全を確保するための努力義務(火山情報の収集、登山届の提出、ヘルメット等の装備品の携行等)

などが定められました。

火山災害から身を守るために
 火山は、事前に噴火を予測できる場合がある一方で、ひとたび噴火すると、噴石・火砕流・泥流等が短時間で火口周辺や居住地域まで襲来する可能性があります。このため、事前の備え、迅速な避難が人的被害の有無を大きく左右します。
 このことから、火山災害から身を守るためには、まず、危険な区域を確認しておくことです。改正活火山法では、市町村等は、火山ハザードマップに防災上必要な情報を記載した、火山防災マップを住民等に配布・周知することとされましたので、火山周辺地域に居住している場合や登山をする場合は、火山防災マップや最新の火山情報を事前に確認し、いざというときに備えましょう。
平成27年5月の口永良部島の噴火の状況(気象庁ホームページより)
平成27年5月の口永良部島の噴火の状況
(気象庁ホームページより)
 そして、火山活動に大きな変化があった場合には「噴火警報」や「噴火速報」が発表されますので、気象庁や市町村からの情報など、テレビ、ラジオ、防災行政無線、広報車、緊急速報メールなどの情報に注意しましょう。市町村から避難勧告・指示があった場合は、速やかにそれに従い行動します。
 また、地鳴りや地震を感じたときなど、危険な兆候が見られた場合には、市町村からの避難勧告・指示を待たず直ちに安全行動をとることが必要です。火山防災マップ等に記載されている避難計画に沿って、速やかに避難しましょう。特に、噴石から身を守る必要がある状況では、速やかに避難するのと同時に、岩かげに身を隠す、近くのシェルターや山小屋等に避難する等の行動が有効です。
 なお、火山活動は想定している過去の事例どおりに推移するとは限らず、同じ火山でも噴火に至る過程や火口の位置などが異なることも珍しくありません。様々な事態に臨機応変に対処できるよう、実践的な訓練等を通して「安全のための行動」を身につけることも重要です。

(総務省消防庁「消防の動き 2015年10月号より」)

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