トップページ日常活動編へ索引

特集 図上訓練の活用−実践的防災訓練のために−



[第3ステージ] 帰宅困難者訓練
職場や買い物の最中に被災することも考えられます。特に遠距離通勤・通学をしている人にとって、家族の安否の確認や、交通機関の途絶は深刻な問題です。家族の安否確認に関しては、「災害用伝言ダイヤル」の使用方法を理解しておくと有効です(→本編「災害用伝言ダイヤル」と「iモード災害用伝言板」参照)。また近年ITの発達により、インターネットや携帯端末を利用した情報収集・伝達訓練なども試みられています。帰宅困難を想定した徒歩訓練などでは、訓練者やバイク救援ボランティアが、カメラ付きの携帯電話を使って、ホームページに通過地点の情報をアップして共有するといったユニークな試みもなされています。
いずれにせよ、帰宅経路についての具体的な情報・イメージをもっておかなければ、災害時のような緊急事態ではうまく機能しません。日常生活や、地域活動の中で、非常時に役立つ取り組みを積極的に進めていくことが重要です。
参考事例
●帰宅困難者訓練(実技)
 職場から家までといった想定で、実際に歩く。危険に対する緊張感を高めるために夜間訓練も実施されている(アクトナウによる帰宅難民ウォークなどの取り組み)。

●帰宅困難サイコロゲーム
 帰宅困難な状況を、地図を使ってすごろく形式で体験する。入門者にとても効果的(NPO法人危機管理対策機構など)。
甲州街道を歩く訓練参加者
甲州街道を歩く訓練参加者
(東京災害ボランティアネットワ−ク提供)
[第4ステージ] 避難所開設・運営訓練
地域防災計画の中で、小学校などの公共施設の多くは、避難所として指定されており、災害時は地域に住む様々な住民が集団生活をする場になります。サバイバルキャンプを避難所で行うことで、疑似体験をすることも有効です。
避難所の運営は、まず避難者である住民同士が集団生活のルールを決め、実行に移していくことが理想ですが、施設管理者としての学校職員、また行政も食事や緊急物資の提供者として、避難所運営にかかわらなければなりません。
こうした立場の異なる人たちが、避難生活上の問題解決にむけて協働していくことになるわけですが、どういった仕事が発生し、誰がそれに対応していくのかをロールプレイング形式で実施していくという防災訓練の試みもなされています。
『日常活動編』では、図上訓練の準備段階に相当する被災シナリオの作成に焦点をあてて紹介しましたが、図上訓練の「実演」メニューとして避難所運営訓練は取り上げやすいテーマであるといえるでしょう。
参考事例
●防災教育の一環として、避難所となる学校や屋外でキャンプを行う(サバイバルキャンプ訓練)。

●ロールプレイング形式の図上訓練、状況付与表と対応表による訓練。避難所運営マニュアルの見直しにもつながる。
東京都中野区多田小学校で行われた、避難所開設・運営訓練
東京都中野区多田小学校で行われた、避難所開設・運営訓練
[第5ステージ] 広域的な活動調整訓練
災害時には、被災情報を発信・収集し、マンパワーや物資などが必要な場所へ有効に届くよう、様々な連携が必要となります。しかし、大規模災害においては通信手段・交通機関への影響を含め、被災者、行政、消防、ボランティアなども、日常とはまったく違う状況におかれることが予想されます。そこで、実際の被災状況を想定しながら、行政や消防等の公的機関の間や、ボランティアセンター・災害ボランティア間の連携のために、様々な図上演習が行われるようになっています。たとえば2004年1月には、東京都が大規模災害時に設置するとしている「広域ボランティア拠点」を立ち上げるという想定のもと、東京災害ボランティアネットワーク、区部のボランティアセンター、東京都間の情報連絡・救援対応図上訓練を、シナリオ形式で行いました。
参考事例
●状況付与表と対応表による訓練
 日本災害救援ボランティアネットワーク(NVNAD)災害救援シミュレーション、東京災害ボランティアネットワークが行った広域避難所開設・連携訓練など。
●都道府県、生活協同組合などによる、広域連携を目的とした図上演習。