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特集 図上訓練の活用−実践的防災訓練のために−



[第1ステージ] 発災直後〜生命を守る
発災直後はまず、自分と自分の身の回りの人たちの生命の確保が最大の課題になります。タンスが倒れてきて子どもが重傷を負うかもしれない、隣家が倒壊して避難路が閉ざされるかもしれない……。一人ひとりがこのステージでの被災イメージを、しっかりともつことができれば、事前の対策、その後の避難行動、救命・救援活動を考えることがいかに大切であるかということについて、家族・近隣・地域で共有することができます。
また、特に大規模地震災害を前提とした場合は、普段地域で行っている典型的な防災訓練=消火活動や避難誘導訓練は、発災直後の「生命を守る」という課題に対してほとんど役立たないのが実態です。家屋の耐震補強や家具の転倒防止などの室内安全対策といった、ハード面の対策も不可欠なものとなります。しかし、一般的な防災訓練では、住民一人ひとりがリアルな被災イメージをもち、加えて室内安全対策・耐震補強にまで取り組みを広げてもらうところまで到達しません。
そこで、『日常活動編』で図上訓練の準備作業として紹介したコミュニティレベル・家庭レベルでの被害想定づくりに着目してみましょう。会社で、自宅で、「いまここで災害が発生したらどうなるか!」というリアルな被災状況をイメージすることで、普段の生活をじっくりと点検してみてください。(→『日常活動編』「地図への書き込み」参照)
参考事例
●障害者の方たち自身に、自分の寝室の様子、向こう三軒両隣との関係などを紙に書き出してもらい、地震時の安全性の観点から、室内安全対策・近隣での協力体制の必要性を共有した事例(東京都台東区社会福祉協議会)。
[第2ステージ] コミュニティレベルの避難誘導訓練
9月1日に地域で行う総合防災訓練では、決まった場所に集まって、そこから広域避難場所に移動するタイプの訓練がほとんどですが、集合場所に集まること自体が困難な人への対応や、広域避難場所への移動ルートが普段どおりに使えるのかどうかなど、実際に被災したときの状況を想定したうえで考えておかなければ、訓練=移動しただけ、に終わってしまいます。
避難誘導訓練をより現実の被災状況に即して、実際に役立つものとしていくためには、地域の想定される被災状況を地図の上で表現することが有効です。『日常活動編』で紹介した防災カルテや、DIG(Disaster Imagination Game)などの図上訓練を取り入れましょう。DIGは、地図と透明なビニールシート、マジックなど身近な素材があれば、誰でもできるので、一般市民が手軽に取り組める机上の防災訓練として、多くの自治体やボランティアグループが採用しています。(→『日常活動編』「地域社会における取り組み」、本編「災害弱者への支援方法」参照)
参考事例
●DIG(Disaster Imagination Game)
地域の地理的状況、防災資源(避難所・病院など)や、危険箇所・建物といった要素を地図の上にかぶせたビニールシートに書き込んだのち、参加者にその地域の被害想定を説明(自治体の既存の被害想定など)。そして具体的な被害状況を付与しながら、参加者は被災者としてどのように行動・対応するかを考え、付箋などに書き出し、それを地図上に貼り付けていく。
●災害時要援護者の避難誘導に備えた地図づくり
居住場所等の記入。ただしプライバシー保護への配慮が必要(情報の管理方法を決める)。