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特集 図上訓練の活用−実践的防災訓練のために−




2 図上訓練とワークショップ −住民の主体的な参加を促進するために

近年、「ワークショップ」という手法が、住民同士が共に考える「場」を運営する手法として、注目されていますが、図上訓練もある種のワークショップの方式をとっています。こうした「場」は、住民の主体性を引き出すものでもありますので、住民のコミュニケーション・信頼関係を醸成し、地域防災力の向上に役立つものとなるでしょう。

図上訓練の一環として『日常活動編』で紹介した「被災シナリオの作成」は、できるだけ現実に近い被害想定・状況を浮かび上がらせていく作業を通じて、被災イメージ・助け合いの必要性に対するリアリティを参加者一人ひとりの中で高めながら、普段取り組んでいる防災訓練と実際に災害が発生した場合の「ギャップ」を埋めようとする試みでもあります。

想定する被災状況に対応した訓練の設定

また、災害に対する想像力が高まることで、発災以降つぎつぎと変わる被災状況を一連の流れとして把握し、どの時点で何が役に立つのか、次に何が起こるのか、どのような協力が必要なのかといった、総合的な判断力を養うことができます。これは婦人防火クラブのリーダーとしては、欠かすことができない資質となります。

さらに、このような「災害に対するイメージ力」を重視した訓練は、福祉や環境など他の地域活動をも視野に入れることで、あたらしい防災資源を掘り起こし、日常の暮らしに根ざした実践的な防災力を高め、さらにはよりよいまちづくり実践につながるものとなるでしょう。

大切なことは、地域住民が主体的になって「みんなで考え、みんなで取り組む」ように促していくことです。防災は、ともすれば「専門的技術をもった人に任せておけば良い」という思考を生みがちですが、大規模災害時には、わたしたち自身が周囲の人と助け合いながら困難な状況を乗り越えていくしかありません。住民が当事者意識をもって取り組めるような「場」づくりが求められます。

そして、婦人防火クラブのリーダーも、多様な訓練の「場」づくりと、住民がみずから考え・行動する主体性を引き出す「ファシリテーション能力」が求められているといえるでしょう。

ワークショップとは?
「講義など、一方的な知識伝達のスタイルではなく、参加者が自ら参加・体験して共同で何かを学びあったり、創り出したりする学びと創造のスタイル」「…“参加”とは、主体的にかかわっていくこと、“グループ”とは、お互いの相互作用や多様性の中で分かち合い、刺激しあい学んでいく双方向性」を意味する。こうした学びのスタイル。
近年、芸術や教育など様々な領域で導入されている方法ですが、まちづくりにおける住民参加・合意形成のための手法としても、様々な形をとりながら多用されています。
なお、ワークショップの要点として、以下の5点があげられています。もともと災害そのものが、常識・予測を超えた事態といえます。はじめからすべて答えを用意するのではなく、地域のみんなが主体的に、継続して防災のことに取り組むことができるよう、地域で取り組む様々な訓練・ワークショップ・学習会などに、このような視点を取り入れていきましょう。
1.ワークショップに先生はいない
2.「お客さん」でいることはできない
3.はじめから決まった答えなどない
4.頭が動き、体も動く
5.交流と笑いがある

(『ワークショップ』中野民夫著(2001)より)